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全盛期の幕開け。ASKAの天才的作曲センスと脱邦楽的志向の結実し始める傑作。



チャゲ&飛鳥からCHAGE and ASUKA(ASKAにするのは翌年)に改名しての一作。"RHAPSODY"(1988)あたりから洋楽志向が強まり、同年の前作"ENERGY"あたりからロンドン・レコーディングを画策していたが本作は国内制作。しかしASKAのUK志向は楽曲にそこはかとなく漂っている。本作発表後ASKAは渡英、CHAGEは自身のバンドMULTI MAXを始動。次作"SEE YA"ではロンドン・レコーディングが実現する。



演奏はBLACK EYESと言うバック・バンドを固定。編曲は十川知司、MULTI MAXにも参加するギタリスト村上啓介など。"PRIDE"など数曲を手掛けた澤近泰輔はこれ以降チャゲアスに欠かせないアレンジャーになる。



[Disc 1]
1 "LOVE SONG"
ASKA曲。流麗なメロディを粘りのあるボーカルとコーラスワーク、ソウルフルなシンセやストリングスで彩る、"恋人はワイン色"に続くASKA流ポップ・ソングの結晶。何度聞いても飽きの来ない名曲。

2 "PRIDE"
ASKA曲。David Foster期のシカゴみたいな洗練されたロック・バラード。Aメロからサビまで雄大な旋律の完成度は圧倒的でASKAの堂に入ったボーカルにも負けない仕上がり。澤近泰輔の幻想的なシンセアレンジは今後ASKAにたびたび起用される。

3 "SHINING DANCE"
CHAGEのちょっとズラシが利いた電子ファンク・ロック。意外にもブラック・ミュージックの影響ある曲がこの時期のチャゲアスにはちょこちょこ存在する。

4 "HOTEL"
ASKA作、性急なリズムのポップ・ロック。これもスリリングな旋律が強烈な引力を持つ。

5 "Break an egg"
CHAGE曲。トライバルなリズムにアコースティックギターの不思議な雰囲気はレッド・ツェッペリンの地味なアルバム曲みたい。サビに入ると急にポップな旋律を聴かせる。もともと2つの曲を1つにしたらしい。

6 "さよならは踊る"
CHAGE曲。実はレゲエのリズムを持つがそれを感じさせない異国情緒。しかし旋律がどうしても弱い。

7 "砂時計のくびれた場所"
ASKA作の2に続く大作ロック・バラード。澤近泰輔による幻想的な編曲をいきなりASKAの繊細なボーカルがつんざき、サビでは靄が晴れるような爽快な旋律を聴かせる。

8 "天気予報の恋人"
"恋人はワイン色"、"LOVE SONG"とこれで三部作と呼びたいASKA流の美麗シンセポップ。旋律の引力と中毒性も劣らず。何度聞いても飽きの来ない名曲。

9 "Don't Cry, Don't Touch"
ASKA作。弾力あるベースとシンセホーンのエネルギッシュなファンク。ASKAもファンクをやったりするのだ。多分、ASKAは当時UKブルーアイド・ソウルに関心をもっていたのではと想像します。

10 "絶対的関係"
CHAGE作。上昇・下降の激しい旋律が耳に残るポップ・ロック。ASKA曲に比べると弱い。

11 "流れ星のゆくえ"
CHAGE作。コンサートのエンディングをイメージしたというストリングス・バラード。これは練られた旋律で平均以上の水準。

12 "WALK"
ASKA作。おそらくCHAGE and ASKAのキャリアを通しても随一の完成度を誇る名曲。深遠なシンセにパーカッション、さらに深みをたたえたASKAのボーカルの伸び、Bメロからサビにかけて進展する芳醇なメロディの爽快感は何度聴いても感動的。

[Disc 2]
1 "MOON LIGHT BLUES"
Disc 2の曲は過去の曲のリアレンジ・セルフカバーになっている。全体的にフォーク時代の曲をモダンな感覚に焼きなおしている。ASKA作のこの曲はソウルフルなオルガンを追加。原田真二が編曲らしい。

2 "嘘"
CHAGE作。ハープを使い原曲のフォークソング風味は消失。

3 "終章(エピローグ) - 追想の主題"
CHAGE作。原曲はファン人気の高いCHAGEの代表曲。ストリングスを押し出し、キーを上げ、テンポを下げているがあまり違いを感じない手触り。

4 "熱い想い"
ASKA作。フォーク・ギターを取り去りスローなシンセ・バラードに。



Disc 2は1以外はオマケの域。Disc 1のASKAの作曲の充実度は凄まじく、"LOVE SONG"、"PRIDE"、"天気予報の恋人"、"WALK"と名曲ばかりの破壊力あるラインナップは素晴らしすぎる。このアルバムの曲だけでもASKAは天才と言わざるを得ない。それに対して、CHAGEはどう考えても足を引っ張っている。この理由はCHAGEが当時MULTI MAXを同時に走らせていた事によると思う。本作に入れる話もあったらしいMULTI MAXのデビュー曲"SOME DAY"はここのASKA曲とも対等の完成度を誇るので、MULTI MAXに流していた曲をここにぶち込んだらとんでもないアルバムになっていただけに勿体ない。しかし、それを加味してもチャゲアスを代表する名盤と言える。